Q&A

部落地名総鑑とは?
部落地名総鑑とは、全国の同和地区(被差別部落)の名称、住所、世帯数、主な職業などが記載された冊子です。1975年にその存在が明るみに出て大きな社会問題となり、調査の結果、8種類の冊子が販売され、購入者数は220を超え、その大半を企業が占めていたことが判明しました。その購入目的は、同和地区の人々を就職から排除することであり、企業はその差別的体質を厳しく問われました。この「部落地名総鑑事件」をきっかけに、企業は、企業の社会的責任として同和問題の解決に取り組むようなりました。
しかしながら、残念なことに2005年から2006年にかけて、過去に出回った部落地名総鑑のコピーや新たな2種類の部落地名総鑑、更にはデータが格納されているフロッピーディスクが回収されるなど、差別体質が解消されていない企業が今なお存在していることが明らかになりました。企業を含め人々の意識の中に、被差別部落と呼ばれる地域や、そこに住む人々に対する誤った認識や偏見が根強く残っていることは否定できないのです。

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同和問題(部落差別)とは?
同和問題とは、「同和地区(被差別部落)出身」などの理由だけで、就職や結婚などで差別を受け、基本的人権が不当に侵害されているという社会問題です。
部落差別の起源は諸説ありますが、中世の「ケガレ意識」が有力な一つの説として挙げられています。当時の人々は、天変地異、死、疫病、出産、火事など、人間の支配力が及ばないところで日常のバランスが乱れることを「ケガレ」と呼んでいました。そして、死馬牛の処理、囚人の処刑など、「ケガレ」に係わる職業の人々は、民衆の中でも特別な存在と見られ、次第に疎外されていきました。こうして疎外された人々は、やがて、武士を中心とする身分制度の中に組み込まれ、江戸時代には、武士、百姓、町人とは別の身分として、住居、服装、祭りへの参加など、社会生活のさまざまな面で厳しい制約や差別的な扱いを受けました。明治政府が1871年に出した「解放令」により法律上の平等は認められましたが、「解放令」反対の運動が各地で起こるなど人々の差別意識は容易に解消されず、こうした差別を受けた人々の居住地域が、現在の被差別部落と呼ばれる地域になったと言われています。
「今も部落差別はあるのですか?」という声を聞くこともあります。確かに、企業啓発、教育、市民啓発等により、表面的な差別事象の数は減少しているように見えますが、インターネット上での差別書き込みなど、匿名性を隠れみのにした陰湿な事件は増加しています。また、2005年から2006年にかけて、過去に出回った部落地名総鑑のコピーや新たな2種類の部落地名総鑑、更にはデータが格納されているフロッピーディスクが回収されるなど、差別体質が解消されていない企業が今なお存在していることが明らかになりました。企業を含め人々の意識の中に、被差別部落と呼ばれる地域や、そこに住む人々に対する誤った認識や偏見が根強く残っていることは否定できません。
「同和問題の解決は国の責務であり、同時に国民的課題である」と言われています。私たちは、一人ひとりが日本国民として、また企業人として、同和問題の解決に向かって努力しなければなりません。

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「同和問題に取り組む全国企業連絡会(略称:全国同企連)」とは?
1975年に発覚した部落地名総鑑事件以降、関東以西の主要都市を中心に、同和問題の解決に向けた企業の連絡会組織(同企連)が結成されました。やがて、各地の同企連を全国規模にすることが議論され、1980年に東京・日比谷公会堂で「差別をなくす企業全国集会」が開催されました。
こうした動きを足場に、1985年から活動を始めたのが「同和問題に取り組む全国企業連絡会」です。現在は13の同企連が加盟しており、事務局を大阪同和・人権問題企業連絡会が務めています。
毎年12月の人権週間に合わせて全国集会が開催されるほか、各同企連代表者による情報交換会の開催など、連携・交流を深めています。

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なぜ企業は同和問題に取り組むのですか?
企業には、部落地名総鑑事件など部落差別の一端を担ってきたという歴史的責任と、社会が抱える諸問題の解決や豊かな社会作りに主体的に貢献すべきという社会的責任があります。残念ながら、差別体質の変わっていない企業が今なお存在しており、企業はその責任を果たしているとは言えません。同和問題は我が国固有の人権問題であり、その解決は国民の責務であると言われています。責任を果たすためにも、まずは従業員一人ひとりが同和問題についての正しい理解と認識を身に付けることが重要ではないでしょうか。
また、エセ同和行為による被害を防ぐ為にも、同和問題についての正しい理解と認識を身に付けることは欠かせませんし、同和問題を学ぶということは、誰もが生まれながらにして持っている権利、人が人として生きていくための、誰からも侵されることのない権利について学ぶことであり、それは人権尊重意識の高揚につながり、「差別のない明るい職場」づくりにもつながるのです。

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「寝た子を起こすな」論とは?
同和問題を取り上げずに放置しておけば自然に解消するという考え方です。今日の社会では、差別が見えにくいものとなってきており、表面的には部落差別は減少しているようにも見えます。そのような現状においては、「同和問題を知らない人に、わざわざ教えることは『寝た子を起こす』ようなものであり、差別を広げることにつながる」という人もいます。
しかしながら、同和問題は現実に起こっている社会問題であり、社会の仕組みや私たちの暮らしの中に、さまざまな形で部落差別が存在しています。誤った考え方や偏見に触れたとき、科学的で正しい知識が無ければ、それを鵜呑みにしてしまい、差別を拡大・助長する結果を招きかねません。差別のない社会をめざすには、「寝た子を起こすな」という考え方は、あまりにも消極的な姿勢と言えるのではないでしょうか。また、自分自身や、自分の身近な人が差別に直面した時に、「放置しておけば自然に解消する」と思えるでしょうか。
企業で働く私たちは、日常の仕事のなかでも多くの人々とかかわり合います。「部落差別は自分には関係ない」という人もいますが、この社会にいまだに根強く残されている不合理や偏見を取り除くことを、自らの課題としてとらえ直し、私たち一人ひとりが何をするべきかを考え行動に移していくことが大切です。

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えせ同和行為とは?
えせ同和行為は、「同和問題は怖く、できれば避けたい」という誤った意識に乗じて、同和問題を口実にして企業や行政機関などに圧力をかけ、図書等の物品購入、寄付金・賛助金、下請けの参加などを強要し、不当な利益を得ようとする行為です。
現在でも、えせ同和行為に直面した際に「ことを大きくせず、内々で処理したい」と、その場しのぎの安易な妥協をしたり、不当な要求に従うケースが見受けられます。
えせ同和行為は、同和問題に対して「こわい」という意識を増幅させ、同和問題解決の阻害要因となっているだけでなく、新たな差別意識を生む大きな要因となっています。不当な要求に対しては、一貫して毅然とした態度でのぞみ、安易に妥協しないことが大切です。えせ同和行為をなくすためには、企業や社会全体の適切な対応が不可欠であり、そのためには同和問題についての正しい理解と認識を身に付けることが必要です。

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